テレビで平岳大さんを見るたびに思い出すこと

大河ドラマ『真田丸』が満を持してはじまりました。

前作がかつてないほどの不評だったこともあって、この日を待っていた!という方も少なくないのではないでしょうか。

大河ドラマで人気の戦国ものであるうえ、主人公は島津忠恒をして「日本一の兵(つはもの)なり」といわしめた真田信繁(幸村)、それを演じるは当代の人気男・堺雅人ですから、期待が膨らみますね。

さて、このドラマで「ドラマ史上もっとも慈悲深く哀愁ある武田勝頼」(注)を演じているのが、平 岳大(ひら たけひろ)さんです。

ご存じの方も多いでしょうが、彼の父親は俳優の平幹二朗さん、母親は女優の佐久間良子さん。

平 岳大さんをテレビや映画でみるたび、思い出すことがあります。

もうずいぶん前のこと、佐久間良子さんが日本経済新聞「私の履歴書」を執筆されました。

毎号興味深く拝見しましたが、平幹二朗さんとの結婚生活にやぶれて家を出た回の記述は忘れられません

ついに“決行の日”がきた。私は息子の岳大(たけひろ)と娘の朋子(ともこ)を連れ、東京・下馬の自宅を出た。子どもの学校で必要なものだけを手に携えていた。

 家族4人で暮らしたスペイン風の洋館がみるみる遠くなっていく。私たちはそのまま東京・麹町にある小さなマンションに移り住んだ。1984年春。子どもは9歳、小学校4年生になっていた。

  「ねえママ。パパは僕たちとは一緒に来ないの?」

 ただならぬ空気を感じたのだろうか、息子が心配そうな表情で声を掛けてきた。

  「あのね。ちょっと事情があって、お父さんは一緒に来ないことになったのよ」

 私は努めて平静に答えようとした。だが言葉の端々が上ずっているのが分かった。息子も娘もすべてを察したのだろう。それ以上、聞いてこようとはしなかった。ただ悲しそうな顔をして、黙ってうつむいているだけだった。

数日後の夜、仕事から帰り、子どもの寝顔を見て、私は胸が締め付けられそうになった。もうぐっすり寝込んでいるはずなのに、頬に涙がたくさんたまっていたからだ。「泣き顔だけは見せまい」と子どもなりに気を使っていたのだろう。「自分のことよりも子どもを守りなさい」。いつも母が話していた言葉が私の心を激しく責め立てた。

おそらく次回・第二回放送で、勝頼は無念の最期をとげることになるでしょうが、平さんが演じた勝頼像は、きっと語りぐさになるに違いありません。

(注)武田勝頼役といえば、個人的にまず思い浮かぶのは、黒澤明監督の映画『影武者』の萩原健一さんです。大河ドラマ『武田信玄』では真木蔵人さんでした。

真田丸ムック