今月はこんな本を読んでみた(2月)

先月に引き続き、このひと月の間に読んだ本を振り返ってみたいと思います。今月はこんな本を読みました。

森博嗣の短編小説をはじめて読む

森博嗣 『素直に生きる100の講義』

前月に三冊も読んだエッセイの続編。今回は、それほど楽しめませんでした。著者のものの見方がわかってしまい、驚きがなくなったということかもしれません。

森博嗣 『僕は秋子に借りがある・森博嗣自選短編集』

僕は秋子に借りがある

これまで森博嗣氏のエッセイしか読んだことがなかったので、今月ははじめて小説を手に取りました。

いきなり長編はキツいので、まずはこの短編集から。なかでも、「卒業文集」という作品が印象に残りました。

61組の生徒たちが綴った作文が延々と続くだけで、何の事件も犯罪も起こらない作品。

来るべき中学生活に想いを致す生徒たちの前向きな気持ちに心温まるものがあるのに、ちゃんとミステリーになっています。

デザイナーの仕事の仕方はデザイン的である

佐藤オオキ 『400のプロジェクトを同時に進める 佐藤オオキのスピード仕事術』

佐藤オオキのスピード仕事術

『スピード仕事術』というタイトルから、タスクを早くこなすアイデアが書かれていると思われるかもしれませんが、プロジェクトを早くゴールに導き、成果に早く近づく方法が論じられている、といったほうが適切でしょう。

著者は若いデザイナー。デザイナーという人たちは、その創り出すものだけでなく、仕事の仕方もすぐれてデザイン的であることを垣間見ることができます。

この本の価値は、「スピード仕事術」というテーマを、あえてデザイナーに書かせたところにあります。人気コンサルタントや気鋭の若手経営者、トップビジネスマンに書かせたら、「1分の無駄もなくバイタルに仕事をする」とか、「夢は手帳に書け」「残業しないで帰れる」「朝四時起きで」みたいなよくある内容になったのではないでしょうか。

記述そのものに著者の「伝え方」「教え方」「学び方」が横溢

中原淳 『知がめぐり、人がつながる場のデザイン〜働く大人が学び続けるラーニングバーというしくみ』

知がめぐり、人がつながる場のデザイン―働く大人が学び続ける”ラーニングバー”というしくみ

著者の中原先生(東京大学総合教育センター准教授)が実践するラーニングバーの本質は、次の説明に端的に表現されています。

ラーニングバーは、

①聞く

②聞く

③聞く

④帰る

という場ではなく、

①聞く

②考える

③対話する

④気づく

場である。

つまり、ラーニング・バーは、世にあふれる「セミナー」のアンチテーゼなのです。

中原先生は、『対話で目指されるべきは、自分内部にある、もはや自明化された考えに「メス」を入れること』だといいます。

そのためには、違う考えに触れ、違いの理由や背景を知ることが有益です。

同じような意見や感想を交換し合って「あなたの言う通り!」と賛同を得て、帰属欲求や承認欲求を満たすだけでは、あまりにももったいない。

世の中には、勉強熱心な人がたくさんいるのに、なぜか「伝え方」「教え方」「学び方」には驚くほど無頓着な気がしてなりません。

その点本書は、平易な記述そのものに、中原先生の「伝え方」「教え方」「学び方」が投影されていますから、学び方はもちろん、伝え方、教え方についても多くの示唆が得られることでしょう。

ビジネススクールは、何かを教わりにいくところではない

入山章栄 『ビジネススクールでは学べない世界最先端の経営学』

ビジネススクールでは学べない世界最先端

ブレスト(ブレーン・ストーミング)のアイディア出しは、実は効率が悪いそうです。

その理由は、第一に他者への気兼ね

第二に集団で話すときは(他人の発言も聞かなければならないので)思考が止まりがちになるから。

ではブレストが無意味かと言うとそうではなく、組織の記憶力を高める重要な作用がある。

つまり顔を突き合わせてブレストすることで、誰がどのようなアイデアを持っているか、誰がどの分野に詳しいかなどを互いに広く知る機会となり、組織知ひいては組織の生産性を高めるというのです。

こんな今日的で面白い議論が、この本にはたくさん詰まっています。平易で気軽に読めるので、おすすめします。

ところで昨今、『ビジネススクールでは教えない〇〇〇』という書名の本が氾濫していますが、曲がりなりにもビジネススクールに学んだ私からひと言。

ビジネススクールは私の知る限り、何かを教わりにいくところではありません。

ディスカッションを通じて広い視野と、考え方の枠組み(注)を身に付けるところ。

ディスカッションをするのに不足している知識があるなら、それは基本的に学校外(自習など)で習得するのです。

(注)誤解のないように付言します。ここで「考え方の枠組み」とは、必ずしもSWOTや3C、4P、5フォースといった方法論を意味しません。目的論的に考えること等、より広い意味合いで用いています。皮相的にしかものを見ないなら、SWOTや3Cはたんなる整理術にすぎないと思います。