「重版出来」の読みはジュウハンシュッタイなのか?

『重版出来!』(じゅうはんしゅったい)は、松田奈緒子によるマンガ作品。

2016年4月期にTBS系にて黒木華主演でテレビドラマ化されました。

重版出来マンガ

近年稀に見る佳作

このドラマは、低視聴率に苦しんだそうですが、個人的には近年稀に見る佳作だと思いました。漫画雑誌の新人編集者である主人公を取り巻く誰かに毎週スポットが当たる趣向で、Twitterでも好評が多く寄せられていました。

殊に、ムロツヨシ(注)演じるキャリア20年のアシスタントにスポットが当たった回は、心にズシンとくるものがありました。

彼は、マンガ家を志して日が浅いのに全国誌掲載のチャンスをつかんだ後輩(永山絢斗)に嫉妬します。彼の成功にではなく、彼の才能に。しかし、自分がかつて描いた自信作にはじめて、かつ最大級の評価をしてくれたのは、天与の才に恵まれたその後輩でした。
ムロツヨシ演じるアシスタントは「これでようやく踏ん切りがついた」と郷里に帰っていきます。吹っ切れた表情で。悲しいけれど、拍手をおくりたい場面でした。

「これ、ジュウハンデキって読むんじゃないんですか?」

前置きが長くなりましたが、私はこのドラマではじめて重版出来が「じゅうはんしゅったい」と読むことを知りました。

重版出来という言葉は知っていましたが、ジュウハンデキと読むとばかり思っていたのです。俺はものを知らないな、と思ったものです。

ところが、です。週刊新潮7月7日号を見て驚きました。

なんと五木寛之先生は、このドラマで重版出来が「じゅうはんしゅったい」と読むことを知ったというのです。そればかりか、彼の周囲にいる複数の編集者が「これ、ジュウハンデキって読むんじゃないんですか?」と言ったと。

ずいぶん話が飛びますが、平成15年改正前の民法第378条に滌除(てきじょ)という定めがありました。抵当不動産の第三取得者が抵当権者に相当の金銭を提供して抵当権の消滅を図る行為です。

テキジョのテキは洗滌のジョウの字。もともと洗滌もセンデキと読むのが正しいそうですが、世間が間違えるので、いつしかセンジョウと読んでいいことになったそうです。

話を重版出来に戻します。
世間が間違えるから読みを変えていいなら、重版出来もジュウハンデキでいいのではないか?とふと思いました。

何せ、文学界に燦然と輝く重鎮・五木寛之先生さえ知らなかったのですから。
ちなみに五木先生は、ドラマで毎回飛び交っていた「重版出来決まりました〜。ありがとうございます〜。」というセリフをキャリア五十余年にして一度も聞いた記憶がないそうです。

これほど綿密に業界事情を捉えたマンガからもはかりしれない業界の実態。

その道のプロに話を聞くのが面白い理由は、こんなところにもあります。

(注)ムロツヨシと聞いてピンときませんか?朝ドラ『ごちそうさん』で竹本教授を演じた人ですよ。ほら、いきなり家に来て「奥!カレーをつくれ!」って言う人。

五木寛之生きるヒント