人が「わかった!」と思うのはどんなときか

人が「わかった!」と思う瞬間

人が本質的理解に達する―腑に落ちる―瞬間。

それは、自分の持っている概念的知識と実体験(実務経験など)がリンクしたときではないでしょうか。

それまで別々のものだったそれらが、「あれはそういうことだったんだ!」とか「こういう筋道で考えればいいんだ!」という気付きによって、結ばれるときです。まるでニューロン同士がシナプスで結合するように。

私自身も、そうした経験を何度もしてきました。

説明の勘どころは「なぜそう考えるか」

ですから、人に何かを説明するときは、いったん事実関係を整理して論点を示し、判断基準を明らかにし(規範定立)、そこからもう一度事実関係に立ち戻って話すよう心掛けています。

たとえば、商工会議所連合会の経営指導員さんたちの研修会等で、支援事例について講評を述べる機会をいただくことがありますが、その場で私がもっとも意識しているのは、どこに着目してどのような基準で論評しているのかということです。

過程を省略して、いきなり結論を述べることができるケースも少なくありません。しかしそれでは、なぜそう考えるか、という「説明の勘どころ」が抜け落ちてしまいます。

簡単なことをテクニカル・タームを使って難しく話す人もいますが、さして難しくないことといえども、分かりやすく話すのは骨の折れることです。分かりやすく話す、ということには、技術的側面もありますが、「説明者が本質的な理解に至っているから自分の言葉で表現できる」という別の一面もあります。では、本質的な理解に至るにはどうすればいいのか。ひとつの方法は「目的」に目をつけることです。

目的は何か?と考えるべき2つの理由

私は、二十代の終わりに、ビジネススクールで学ぶ機会を得ました。そこで得たものはいろいろあるに違いありませんが、ひとつだけ挙げるとすれば、それは「目的は何か?と何度も立ち戻って再確認する習慣」だという気がしています。

目的は何か?と自問することは非常に大切です。理由は2つあります。

ひとつは、目的はうつろいやすいものだから。

最初にプロジェクトの目的をメンバー相互で確認したはずなのに、議論がはじまったとたん、プロジェクトの目的がどこかに行ってしまい、よくわからない結論に落ち着く会議など、よくご経験されるのではないでしょうか。

もうひとつは、真の目的に気づくのはそう簡単なことではないからです。最初に確認した目的が皮相的なものであると、大切なことが見逃され、プロジェクトはなんとなくしっくりこない結果に終わりがちになります。

手段と目的は、多段階の連鎖構造を持っています。ある目的は、より上位の目的を達成するための手段であり、上位の目的はさらに高位の目的を達成するための手段である、というように。その連鎖をたどってより上位の目的にアクセスすることは、「ほんとうの目的を達成するにはどんな手段がいいのか」に気づき、ひいては本質的な問題解決にいたる糸口となるのです。【参考記事「連関図の効用」】

フレームワークを意味のある道具にするには

小中学生ならいざ知らず、大人の学びというものは、知識を増やすことより、むしろいろんな場面で役立つ応用力を身につけることのほうが大切なことが多いのではないでしょうか。

現実は理論通りにいかない。その通りです。でも、成功例が別のケースに転用できたり、失敗例と同じ危険を別の局面で認識したりするのはなぜでしょう。何らかの要因を捉えて、そこに通底するものを見いだしているに違いありません。

中小企業支援の世界には、なんとかの一つ覚えのようにフレームワークを振り回す人がいます。フレームワークは万能薬の処方箋でもなんでもなく、混み入った事実関係をときほぐし、ポイントをつかみ、分類したり、他のものと比較したりして、考えやすくする道具に過ぎません。事実をどう捉えるかに意識的であってはじめて、フレームワークは意味のある道具になっていくのです。

概念的なことを長々と語る人が概念的思考力に優れているかというと、おそらくそうではないでしょう。概念的理解が進めば、抽象と具象の間を自由に行ったり来たりして考えることができるはずですが、それができないから概念的な話だけになってしまうのではないでしょうか。具体的な話しかできない人もまた然り。

本で学んだ断片的知識を再生して仕事した気になるのも、あれはこうだった、と過去の経験を所与のものと決めつけるのも簡単ですが、それで何か意味のあることを語った気になるというのは、残念なことです。

3匹の子豚の中でもっとも賢いのは誰か?

安田佳生『検索は、するな。』(サンマーク出版)に、「3匹の子豚でもっとも賢いのは誰か」という話が出てきます。

3匹の子豚たちが置かれて状況は会社の経営ととてもよく似ている。目先の売り上げばかり優先していたら後からやってくるを避けることができない。後からやってくるであろうリスクへの対処が完璧でも、今踏ん張れなければ多くのリスクがくる前に会社は潰れてしまう。

三匹の子豚という寓話を知識して捉えれば、レンガの家を作った末の弟がいちばん賢いということになるわけですが、現実はそう単純ではない。

私たち士業が扱っている問題とは、そういうものだと思います。

%e3%82%8f%e3%81%8b%e3%81%a3%e3%81%9f