使わなくてよい言葉「あいつはわかってない」

「あいつはわかってない」。

飲み屋のサラリーマンのおじさんたちの会話から聞こえてきそうなフレーズです。

自分をいとも簡単に、評した相手より高みに置くことのできる便利ワードということができるかもしれません。

「その講師はわかってないね」。

二年ほど前のこと。不動産鑑定士の「収益還元法の精緻化」といったような内容の研修に参加したとき、最後の質疑応答で、受講者からこんな質問が出ました。

「割引率と、NPV(正味現在価値)と、IRR(内部収益率)の関係がよくわかりませんでした。そこのところをあらためてご解説願います。」

(じつは私自身も、講師がレジュメのその項だけウヤムヤに駆け足で通り過ぎたことに気付いて「オヤ?」と思っていました。)

ところが講師は、何か要領を得ないことをモゴモゴいうだけ。

質問者も「その説明がよくわからないと言っているんです。わからないまま済ませては、私たちは研修に参加した意味がないではないですか!」と少しイラだった声を上げ、会場もざわついてきました。

結局、納得のいくような解説を聞いた記憶がありませんから、「後日ご回答します」とでもなったのかもしれません。

あなたは、「その講師はわかってないね」と嗤うでしょうか。でも、そんな必要は全くない。

「IRRは、その資金流列のNPVをゼロにするような割引率。これによって、規模の異なる投資案同士の魅力度が比較可能になる。」とでもコメントすれば、話はそれで終わりではないですか。

わかっているなら、端的に言えばいい。

冒頭の話に戻ります。

「あいつは◯◯がわかってない」。◯◯には、いろんな言葉が入るのでしょう。

でも、自分がそんなによく◯◯をわかっているなら、わかっている内容を端的に指摘すればいい。

「あいつはわかってない」という言葉が客観的に表現しているのは、むしろ当人がわかってない某者と同じレベル、否、それ以下の見識しか持ち合わせていないことなのではないか。そんな気がしています。

書いているうちに、以前、『「はっきり言って」の戒め』と題してブログに書いた、文学の先生の言葉を思い出しました

『はっきり言って』というフレーズは、はっきり言えない時に必要なもの。本当にはっきり意見を述べれば、『はっきり言って』はいらない。