私のブックレビューまとめ(その2)

ブクログ(booklog)というブックレビューサイトに書きためた歴史もの関連のレビューをまとめました。

数年前に書いたものなので、とりあげた本はいずれも刊行からやや年月が経ってしまっています。ご容赦ください。

和田 竜 『戦国時代の余談のよだん。』

著者 : 和田竜
ベストセラーズ
発売日 : 2012-10-26
『のぼうの城』の原作者である和田竜が、著作のうらばなしなどを綴ったエッセイ。
歴史小説は相当読んだが、これまでのマイベストは、不幸にも絶版となった池宮彰一郎の『島津奔る』で、『のぼうの城』はこれに次ぐ。
このエッセイを読んで、この人の小説がなぜ面白いか気付いた。
彼はもともと脚本家志望で、『のぼうの城』も脚本を改題ノベライズしたものらしい。場面場面がじつにビビッドだったのはそのせいもあろう(小説でも映画でも、成田長親が石田三成の命で狙撃されるシーンが最重要なターニングポイントで、小説ではここがじつに鮮やかに表現されていた)。
また、綿密に取材しているのに、小説にとりあげたのはその一部にすぎないようだ。本当なら、史料のうえでは長親以上に目立っている正木丹波の人物像や、登場人物中もっともはやく長親の将器を見抜いた大谷吉継のエピソードなど、いろいろ書きたいところ。でも、彼はそうしなかった。
ストーリー展開に必要な最小限度の情報量で、小説を成り立たせる。それゆえ、ストーリー展開にリズムがあり、読んでとまらない面白い小説になったのではないか。和田竜という若い歴史小説家の個性が際立つ好エッセイでした。

海路〈第11号〉戦国・織豊期の九州・城郭

著者 :
「海路」編集委員会
発売日 : 2013-05-08
戦国期九州の城郭の研究者たちの論考六篇を収録。
とくに興味深いのは後半の二篇。
木島孝之『九州にとって「豊織」とは』は、中央で豊織勢力が創出した城郭構造(縄張り)が、辺境の地九州でどのような変遷過程を経て取り入れられていったかを、縄張り図を用いて実証的にたどる。残念ながら、豊後府内城の縄張り図と何度も記述を見比べたが、筆者の言う「簡略化された馬出のリング型」というのが私はまだ理解できていない(もう一度見てみます)。
もっとも興味深い指摘は「中央における近代的城郭形態がなぜ九州では部分的にしか取り入れられていないのか」の理由についてである。
筆者は、技術的に困難であったのでも、その意義が理解できなかったのでもないとし、深く地元と結びついた在地型家臣団という抵抗勢力の存在を指摘している。
その好例として挙げたのが鹿児島城。築城を強行しようとする息子忠恒(家久)を島津義弘は幾度も強く諌めた、結果は義弘の危惧したとおりになった、というのである。詳細は本書で!

 西股総生 『戦国の軍隊―現代軍事学から見た戦国大名の軍勢』

まだ第二章を読んでいるところですが、いま書いておきたい。
これは名著。日本の在野の歴史研究家は、ほんとうにレベルが高い。
本書全体を通しての問題意識を綴る第一章は、秀吉の小田原征伐の前哨戦である山中城攻めを、豪傑渡辺勘兵衛覚書を題材に辿る。
そこから、優れて組織的な鉄砲戦術と、手柄第一の個人プレーという相反する要素にどのように折り合いを付けたのか?という論点が提示される。
同じ在野の歴史研究家である鈴木眞哉の著書も面白かったが、本書はそれを上回る面白さである。
ちなみに渡辺勘兵衛は、『信長の野望』ファンならお馴染みの豪傑。山中城攻めでも、強襲を渋る主君中村一氏の判断を待たず、どんどん突撃していく。

北森 鴻 『なぜ絵版師に頼まなかったのか』

タイトルを見てピンときた人は、アガサ・クリスティー好きでしょう。
クリスティーの佳作「なぜエバンスに頼まなかったのか」をもじった本作は、明治期の東大教授ベルツ博士を探偵役とするミステリー。
北森作品のなかでは評価の高くない部類に属する作品ですが、文明開化という時代背景や、モース、ナウマンといった登場人物の面白さもあって楽しめました。
歴史上の人物を探偵役にするミステリーは面白いですね。織田信長、芥川龍之介、宮本武蔵らが探偵役となった井沢元彦の連作集「七つの迷路」も好きです。