清掃スタッフさんたちのカーテンコール

殺人はおろか、犯罪など何も起きていないのに、ちゃんとミステリーになっている、そんな小説が好きだ。

犯人を探偵役の主人公が追う、という決まりきったフォーマットに依存していないところに魅力を感じているのかもしれない。

伊坂幸太郎の短編小説『彗星さんたち』もそんな作品のひとつ。

新幹線の清掃スタッフたちがある日体験した諸々のことを綴っただけなのに、最後まで読むと、ファンタジックなミステリーだったことがわかる、という仕掛けだ。

「清掃が終われば、最後のお辞儀だ。カーテンコールのような大仰なものではないが、新幹線を背にスタッフが並び、礼をする。」

清掃スタッフのお辞儀を舞台俳優のカーテンコールになぞらえたところがいたく気に入った。

今後、清掃スタッフさんたちのお辞儀を見るとき、きっとカーテンコールという言葉を思い出すだろう。