問題はそこじゃない

長く需要不足が続いたせいで、経営不振の原因を「反射的に」売上不振に求め、集客(顧客増)を課題と設定して疑わないコンサルタントがいます。

確率的には、制約条件が需要にあるケースが多いので、その短絡さが表面化する事態は比較的少ないですが、ときに「問題はそこじゃない」あるいは「問題はすでに別の局面に移った」と客観的に見えることがあります。つまり、ボトルネックがほかにあるにもかかわらず、それを看過して一生懸命、需要を増やすためのアドバイスをしていることがある、ということです。

なぜそんなことが起こるのでしょうか。

第一に、「慣れ」でコンサルティングを行っていると、起こっている事態を虚心に捉えることができず、アドバイスがその会社固有の状況に即応しないものになりやすいからです。固有の状況を踏まえないものは、どんなに具体的でも一般論の域を出ません(そういう個別論っぽいけれど一般論にとどまることは少なくないので、注意が必要です)。

第二に、改善する(いまより良い状態にする)という発想の限界です。10万円の粗利が15万円になるのは粗利前同対比150パーセントで一見よいことに思えますが、ほかに制約条件があって黒字化が困難ならば、所詮経営が立ち行かないことに変わりはありません。「ここまでは到達しなければいけない」というゴールを「合理的に」見通すことなしに取り組みをスタートすると、得てして何のために頑張ったかわからない事態に陥りがちになります。ゴールへの到達に役立たない努力は、無駄なばかりか、立ち行かないビジネスの枠組みを変えるための時間と資金を浪費させてしまいかねません

コナン・ドイルは、『花婿失踪事件』の中で、シャーロック・ホームズに次のように言わせています。

「ものを見るのが僕の仕事ですから。あるいは、他の人が見逃すものを見る訓練を、僕が積んできているのでしょう。そうでなければ、どうしてあなたは僕の意見を聞きに来るんでしょう?」

「見えないのではなくて、気がつかないんだよ、ワトソン。きみはどこを見るべきかわからなかった。それで重要なことをすべて見逃したんだ。」