起きていることはすべて正しいのか?

一時期、ベストセラーを連発していた勝間和代さんの著書に『起きていることはすべて正しい』というものがあります(2008ダイヤモンド社)。

私自身は、この本を読んでいない(読む予定もありません)ので、彼女がいかなる文脈で「起きていることはすべて正しい」と言っているのかは知りませんが、書評などを見ると「すべてを客観視せよ」との主張かと推測されます。

 

活況を呈する収益物件市場

ここ数年、金融機関の積極的な融資姿勢もあって、賃貸マンション、料飲店ビルなどの収益物件市場は活況を呈しています(ただし、今年に入ってから、空室率の上昇など過剰供給リスクを懸念した金融庁の指導もあって、融資姿勢に変化が見られるようです)。

大分市・別府市のみならず、中津市や日田市でも県外投資家が収益物件を物色し、高値での成約がしばしば見られるようになった結果、取引利回りの低下が目立っています。

さて、かかる収益物件市場の実態をどう評価すべきでしょうか。

「起きていることはすべて正しい」なら、成約価格は適正価格≒正常価格ということになるのでしょうか。

不動産鑑定評価基準は、正常価格について次のように言っています。

正常価格とは、市場性を有する不動産について、現実の社会経済情勢の下で合理的と考えられる条件を満たす市場で形成されるあろう市場価値を表示する適正な価格をいう。

この場合において、現実の社会経済情勢の下で合理的と考えられる条件を満たす市場とは、以下の条件を満たす市場をいう。

(1)市場参加者が自由意思に基づいて市場に参加し、参入、退出が自由であること。なお、ここでいう市場参加者は、自己の利益を最大化するため次のような要件を満たすとともに、慎重かつ賢明に予測し、行動するものとする。

① 売り急ぎ、買い進み等をもたらす特別な動機のないこと。

② 対象不動産及び対象不動産が属する市場について取引を成立させるために必要となる通常の知識や情報を得ていること。

③ 取引を成立させるために通常必要と認められる労力、費用を費やしていること。

④ 対象不動産の最有効使用を前提とした価値判断を行うこと。

⑤ 買主が通常の資金調達能力を有していること。

(2)取引形態が、市場参加者が制約されたり、売り急ぎ、買い進み等を誘引したりするような特別なものではないこと。

(3)対象不動産が相当の期間市場に公開されていること。

不動産投資に必要な知識のある人は全体の約1%

たしかに、現実の収益物件市場においては、供給される優良物件が少ないため、ここ数年のように広く収益物件が物色される局面では、品薄感も手伝って、実際には高額の価格で成約に至ることがあります。

しかしながら、当該物件が存する地域の実情や、修繕経緯や補修・メンテナンスの必要性の程度すら知ろうとせず、利回りを主要な判断材料に行う、今日しばしば観察されるような投資行動は、本来の合理的な投資主体によるそれとは、かけ離れていると言わざるを得ません(個人的には、優良物件の取引利回りと、そうでない物件の利回りが混同されて、独り歩きしているのではないかと疑っています)。

会社員が副業で手掛ける不動産投資のセカンドオピニオンサービスを手掛ける株式会社ノークリーは、「不動産投資の知識や情報の大幅な不均衡が投資リスクを増加させている」と指摘します。

同社が、不動産投資購入経験者100人を対象に行なったアンケートは、不動産購入前に家賃や不動産価格の相場を充分知っていた1.5%購入する不動産地域の住民の特性や施設の状況、地域の雰囲気や環境に関する知識を充分に持っていた:9%不動産鑑定士など第三者に購入物件の価格の鑑定依頼した:0という結果になった由。

本当に「起きていることはすべて正しい」なら、30年前のバブルなど無かったはずだと思いませんか?