人は研修では変われない

4月16日、東京有楽町の朝日ホール(有楽町マリオン内)にて、公益社団法人日本不動産鑑定士協会連合会による「不動産鑑定評価の日」記念講演会が開催されました。

講師は、日本ラグビーフットボール協会コーチングディレクター中竹竜二さん、テーマはスポーツマネジメント ~強い個人と強い組織の作り方です。

鑑定協会がなぜラグビー?という少々の疑問は残りますが、結論から言えば、これが実に素晴らしい講演でした。

これまで私が参加した中で最高と言っても言い過ぎではありません。

「うわ~こいつオーラねえ~」

いまはラグビーコーチのコーチ、あるいはそのまたコーチといったお立場にある中竹氏は、早稲田大学蹴球部史上はじめて3年生まで補欠で主将になった人物。当時、新主将の名を告げられた下級生たちは「その人誰?」と言い合ったといいます。

カリスマの誉れ高い清宮克幸氏(清宮幸太郎選手の実父)の後を受けて監督に就任した時には、選手の間から聞こえよがしに「うわ~こいつオーラねえ~」の声が飛んだそう。

選手に面と向かって「死ね!」と言われたことすらあるそうです。

それまで実績のある強く自信に満ちたリーダーに「正しい答え」を示してもらうことに慣れた選手たちに、彼は自ら考えて動くことを粘り強く、少しずつ植え付けていきました。

『必ず失敗するリーダーシップのパターンがあります。それはリーダーという虚像を演じること。リーダーにも承認欲求はある。俺はリーダーにふさわしいと自慢もしたくなる。でも、それは組織にとってマイナスの作用しか持ちません。』

「なあ五郎丸、ここはどうすればいいんだ?」

中竹氏は監督時代、采配に迷うと「なあ五郎丸、ここはどうすればいいんだ?」と五郎丸歩選手に聞いていたそうです。

すると五郎丸選手は「ここは監督、こうしてこうですよ」と的確な意見を授けてくれる。

彼は次第に、いつ監督に聞かれてもいいようにゲーム運びを監督目線で見るようになったに違いありません。

五郎丸選手は、いまも中竹氏を「人として心から尊敬している方です」と述べる一方、冗談めかして「ま、ラグビーは僕が教えてあげましたけどね」と言っているそうです。

人はトレーニングによってしか変われない

講演やセミナーの講師をしている方なら、一度中竹氏の講演を聞いたほうがいいと思います。

コンテンツ自体も素晴らしいですが、きっと自分のことが恥ずかしくなるくらい、聴衆を学びに導くとんでもない力量を見せつけられることになるはずです。

『講演やセミナーの成果を測る方法として、参加者の満足度がよく用いられますが、あれは無意味です。今日的には、転移率すなわち学んだことがどれだけ現場での実践につながったかが重要です。では、その転移率は、世界平均で何%くらいだと思いますか。なんと8%です。つまり、一般的な研修はほとんど現場では生かされないということです。それはなぜか。その人の身の丈に合ってない、あるいは繰り返しにより定着させることができないから。人は研修では変われない。人はトレーニングによってしか変われないんです。』

新しいリーダーに求められる能力

『コミュニケーション能力の高い人、例えばデキる営業マンは、質問の数がコンスタントに圧倒的に多い特徴があります。優れたプロフェッショナルは、質問(クエスチョン)と回答(アンサー)とでは、圧倒的に高い率で質問を考えています。よいアンサーは、よい質問から生まれるからです。』

『メジャーリーグで活躍した吉井理人投手は、メジャーのコーチには(教えられるのでなく)聞かれるばっかりだった、と述懐しています。それも「君の好きなプレイは?」とWillを聞く。すべきかどうかより、どうしたいかを聞き、相手が自分で答えを出すのを助けるのです。』

『新しいリーダーに求められる能力は、調整能力よりもビジョン創造であり、そのためには回答力より質問力のほうがより重要となります。』