私選・初心者にオススメしたいジャズの名盤5選+1

映画や小説など、何らかの機会にジャズにふれ、「ジャズっていいなあ…」と思っても、まず何を買えばよいかは結構大問題。

新譜や知る人ぞ知るマイナーな奏者のリーダー作にいきなり手を出すのは考えものです(私はそれでずいぶん損をしました)。

そこで、ここでは、ジャズファンなら誰でも知っていて、予備知識がなくても聴きやすく、「ああ、一生もののいい買い物をしたよね」と言ってもらえるような名盤のみを5枚選んでみました。それでも、「クリフォード・ブラウンは嫌い」「キャノンボール・アダレイの『Somethin’ Else』は何だかダサくてイヤ(注)」といった私自身の好みは少しく反映していると思われます。

(注)本作は、実質的にはマイルス・デイヴィスのリーダー作という趣があり、世間的には名盤中の名盤とされています。

Sonny Clark / Cool Struttin’

いの一番に紹介したいのが、ソニー・クラークの「クール・ストラッティン」(bluenote,1958)です。
行方均編『200DISCSブルーノートの名盤』(立風書房)における、後藤誠氏の解説がこのアルバムのすべてを言い尽くしており、付け加えるべきことは何もありません。

日本のファンにとって、本アルバムほど思い深い名盤はない。(中略)ジャズ・アルバム中もっとも有名とも言われるそのジャケットは、古き佳き時代のアメリカへの憧憬を具現化したモダン・アートそのものだ。(中略)気取って歩く女性の動きを模写したブルース形式のタイトル曲と、日本的な哀愁を湛えた「ブルー・マイナー」は、クラークが残した代表曲であると同時に、このレーベルが誇る名曲でもある。

 

Bill Evans / Waltz For Debby

Waltz For Debby

孤高の耽美派ピアニスト、ビル・エヴァンスの最高傑作とされる「リバーサイド 4部作」のなかでも、ひときわ人気が高いのが本作「ワルツ・フォー・デビイ」(Riverside,1961)。

四谷いーぐる店主で、ジャズ評論家としても知られる後藤雅洋氏は、初心者にまずこのアルバムを買うことを薦めるそうです。

なるほど、親しみやすいメロディ、「ジャズはうるさい音楽」という先入観を挫いてくれるに十分な静謐で端正な演奏スタイル、バランスのとれた選曲。そして美しいジャケット。何度聞いても新しい発見があり、聴く者を決して飽きさせることのないきわめて上質の作品です。

後掲の動画は、後年収録されたスタジオライブの模様で、伴奏者も当アルバムとは異なっていますが、ビル・エヴァンスの世界の一端は伝わるのではないかと思います。

Sonny Rollins / Saxophone Colossus

この盤がジャズへの入口だった、というファンは多いのではないでしょうか。私の場合もそうでした。高校1年生の頃、NHKのFM番組「軽音楽をあなたに」でソニー・ロリンズ特集があり、それをエアチェックしたのが最初です。当時、「ジャズってもっと難しいイメージだったのに、こんなに楽しく、わかりやすくていいのだろうか?」と感じた記憶があります。

個人的によく聴いているのは、「Night at the Village Vanguard」(bluenote,1958)ですが、この盤のほうがより一枚目にふさわしいと思います。

Stan Getz / Stan Getz Plays

作家村上春樹氏がこよなく愛してやまないのがスタン・ゲッツ。著書『ポートレイト・イン・ジャズ』(新潮文庫)では、次のような最大級の賛辞を贈っています。

そう、ゲッツの音楽の中心にあるのは、輝かしい黄金のメロディーだった。どのような熱いアドリブをアップテンポで繰り広げているときにも、そこにはナチュラルにして潤沢な歌があった。彼はテナーサックスをあたかも神意を授かった声帯のように自在にあやつって、鮮やかな至福に満ちた無言歌を紡いだ。

そうなのです。モダンジャズの巨人と呼ばれる人は数あれど、これほどメロディアスなアドリブを繰り広げる奏者はほかにいないのではないでしょうか。後掲動画の12分すぎに始まる『恋人よ我に帰れ』(Lover,come back to me)など、どこまでがテーマで、どこからがアドリブかわからない、否、そんなことはどうでもよくなる吹きっぷり。彼こそジャズの歴史上最高の天才です。

村上氏のいちばんのお気に入りは「stan getz at storyville」(注)であるそうですが、ここでは私の好みでこの盤を選びました。

(注)村上春樹氏の初期作品『1973年のピンボール』に、主人公がこのアルバムに収められている「Jumpin’ With Symphony Sid」のソロパートを口笛で吹くシーンが出てきます。

Miles Davis / ‘Round Midnight

最後はやはり「ジャズ界の帝王」マイルス・デイヴィスで締めなくてはならない気がします。
彼のことを「卵の殻の上を歩くようにトランペットを吹く」と形容したのは誰だったか。マイルスのミュート・トランペットの音色はそれほどに繊細な響きを持っています。
マイルスに関しては、どの盤を挙げるべきか迷いました。「Kind of Blue」(Columbia)も、「Relaxin’」(Prestige)もいいと思ったのですが、1曲目の冒頭から「ああ、これぞまさにジャズだよなあ」という気分に浸るには、本盤がベストという結論に至りました。

おわりに

ちなみに私自身が最初に買ったジャズのレコードは、日野皓正のデビュー作「ALONE,ALONE AND ALONE」(takt,1967)でした。日野自身の作曲になるあまりにも美しい表題曲は必聴ものです。

ここまで書いてようやく気がついたのですが、じつは私、上記6枚のうち、CDを持っているのはわずか1枚のみでした(レコードなら持っていますけど)。気軽に聴けるように、CDを買おうかな…。

アローン・アローン・アンド・アローン