映画『宣戦布告』で考える防衛問題

映画『宣戦布告』とは

映画『宣戦布告』は、同名のサスペンス小説(麻生幾著)を原作として制作された日本映画です(2002年公開)。

原作は、発表当時から注目を浴びていた記憶がありますが、映画のほうは話題となった印象がまったくありません。

本作の撮影に防衛庁・自衛隊の協力が得られなかったことや、クランクアップから全国公開まで2年もの月日を要したことは、この映画の内容が、それだけデリケートな問題を含んでいることを示唆しています。

宣戦布告

精強自衛隊最大の弱点

あらすじはこうです(若干ネタバレあり)。

敦賀半島にK国の潜水艦が座礁、完全武装した特殊部隊が上陸したとの情報が入った。諸橋首相(古谷一行)は当初、警察力のみでの解決を企図するが、重火器を持つ敵に対処できないことが判明する。

自衛隊の出動は法解釈の問題等から下されずにいたが、民間人犠牲者が生じるにいたり、諸橋首相はついに陸上自衛隊第14普通科連隊に出動を下命した。

しかし、武器使用の合法的な解釈が行えず、反撃の許されない現地部隊では次々と隊員が死傷していく。

官房長官(佐藤慶)が叫ぶ。「手榴弾を使用する合法的な解釈を何とか考えろ!」

万事慎重だった諸橋首相も、打ち手がすべて法令に阻まれる現実に声を荒げる。「どうしていつもそこにぶち当たるんだ!きみらがそうやって反対している間に、何人死ぬかわからないんだぞ!」。

防衛庁事務次官が静かに反論する。「お言葉ですが、私の考えで反対しているわけではありません。憲法を申し上げているだけです。」

官邸が手榴弾使用をめぐる法令解釈に悩むなか、現地部隊の犠牲者はますます増加していく。木之元亮演じる連隊長は、とうとう独断で手榴弾使用を許可する…。

米軍式のすぐれた装備を持ち、士気も練度も高い精鋭・自衛隊最大の敵は「法令の不備」だったのです。

政治家の責任とは何か

映画の終盤、K国のミサイル基地が発射体制に入ると、諸橋首相は「万が一のときは、基地をたたく」決意を固めます。

これに同意できない外務大臣は「それでは先制攻撃になる!わしゃもう、責任持てん!」と部屋を出ていきますが、諸橋首相の決意は揺らぎません。「われわれの責任は、1億2千万の生命を守ることだ」。

さて、日本の運命はどうなるのか?諸橋首相は航空自衛隊に先制攻撃を命じるのか?それとも、最悪の事態は回避されるのか?回避されるとしたら、それはどのような手段によってか?

VHSソフトを持っていたこともあって、私はこの映画を5回ほど見ました。名作ではないかもしれませんが、われわれに足りない「思考実験」の機会を与えてくれるよい映画だと思います。

【追記】

この映画の冒頭、諸橋総理は、外国の要人に「鞘の内」の話を披露します。
「鞘の内」とは、刀を抜くまでもなく相手に勝っているという意味。こちらに戦う用意があり、かつ相手より圧倒的に技量が優れていることがわかれば、相手は戦意を失うからです。
ネタバレは控えますが、この「鞘の内」は本作の重要なキーワードであり、総理と秘書官の会話にも出てきますし、結末への伏線ともなっています。