「ビジネスの流れ」をくわしく知る意味

魚などの水産物が最終消費者に届いて、刺身や煮魚・焼魚などとして消費されるまでのプロセスでは、収穫・加工・流通・販売といったさまざまなタイプの仕事が、さまざまな主体の関与によって行われています。

例えば、稚魚の放流のような漁場の維持活動を前提に、漁家はさまざまな漁法により魚を引き上げ、漁船上で選別し、冷蔵します。漁港につくと、獲った魚は水揚げ・選別を経て、下処理されます。産地市場でセリ値が付けられ、一部は冷凍に振り向けられるなどによって需給調整が図られた魚は、消費地へと運ばれ、消費地市場や仲卸業者を介して小売店や料理店に供給され、ようやく消費者の手にするところとなるわけです。

このような一連の仕事の流れは、一般に「サプライプロセス」「サプライチェーン」と呼ばれています。製品は、主として各供給者の属性やモノの性質によってそれぞれ異なった、さまざまな生産流通過程を経てわたしたちの手元に届けられているのです(注)。

ところで「仕事の一連の流れ」をくわしく知ることは、ビジネスにきわめて重要なヒントを与えてくれます。

大切なことは、需要者や供給者の担当プロセスを「自分に関係ないもの」「ブラックボックスの中の出来事」と考えないことです。

連携先を含む一気通貫のビジネスプロセスを具体的に描くと、自分の見えていない部分に気づき、問題意識が深まります。

プロセス図解があれば、どこまでを自社で担当するのがよいか(工程範囲をどうするか)の検討もしやすいですし、各プロセスの機能や重要管理点について掘り下げることで、業務改善のさまざまなアイデアが得られるのです。

ビジネスプロセスに意識を向けることは、また「ビジネスは必ずしもゼロサムの関係に立つ(一方の利益が他方の損失になる)ものではない」ことも教えてくれます。

お手伝いをはじめてもうすぐ丸二年になる私のお客さま(K社長)は、顧客の悩みを聞くうち(それは自社の商品やサービスとは元来関係のないことでしたが)、今日的な競争のポイントがどこにあるのかを発見し、自社にも顧客にもメリットのある提案をして、ビジネスを有利に進めておられます。思わぬところに非価格競争のポイントがあったことに、K社長もおどろきを隠せないようでした。

しかし、そもそもK社長が顧客との雑談にハッとしたのも、サプライチェーンに起きつつある構造変化に対する問題意識があったからだと思うのです。

まずビジネスプロセスを図解するところからはじめてみませんか?おそらく最初から精緻な図はできないことでしょうが、「うまく書けない部分」にこそきっとヒントが潜んでいます。

(注)「一連の仕事の流れ」が生み出す成果に着目すると、サプライチェーンは、「モノが各段階で徐々に付加価値をつけられていくプロセス(価値増殖過程)」と見ることもできます。サプライチェーンのこの側面を重視する立場からは、「バリューチェーン 」という捉え方が提唱されています。サプライチェーンが業務プロセスを時系列であらわしたものとするならば、バリューチェーンは純粋な機能の連鎖を描くものといえましょう。下図は、水産業のバリューチェーンを表したものです。

水産業のバリューチェーン