「ターゲットは誰ですか?」がバカの壁にぶちあたる理由

「ターゲットは誰ですか?」という質問に、腑に落ちる回答が返ってくることはまれだ、というのが中小企業支援に携わる私自身の印象です。

今日、企業経営においてマーケティングが占める地位は絶大であり、かつマーケティングは「STPにはじまりSTPにおわる」といっても過言ではないにもかかわらず、ターゲットにかかる認識がその程度にとどまるならば、「ターゲットは誰ですか?」という質問は愚問なのではないか、と疑ってみることは無駄ではないように思います。

(注)STPとは、市場を細分化し(Segmentation)、ターゲット層を抽出し(Targeting)、ターゲット層に対する競争優位性を設定する(Positioning)ことで、マーケティングの目的である「自社が誰に対してどのような価値を提供するのか」という問題を明確にするために用いるフレームワークです。

「ターゲットは誰ですか?」という質問は愚問か

「ターゲットは誰ですか?」という質問への回答によく見られる「症例」として、「ターゲティングの意義を理解していないケース」「需要者の属性や行動に対する洞察を欠くケース」の2つがあげられます。

前者は、「すべての方がお客さま」「なるべく多くの方に買ってほしい」というもの。

すべての顧客のニーズを満たすことは不可能という認識に立ったうえで、誰のためのビジネスかを決めよう(誰のためのビジネスかを決めなければ、何を行ない、何を行なわなくていいかがわからないから)という、ターゲッティングの意義が理解されていないわけです。

後者は、ターゲットは「子どもを持つ30代~40代の母親」などと決まって入るのですが、その人たちがどのような集団かがよくわかってないパターン。

誰のためのビジネスかを決めたとしても、相手がどんなところにいて、どんな暮らしをしていて、どんなことに関心を持っているかをじゅうぶんに把握していないと、何を行ない、何を行なわなくていいかがよくわからないので、結果はターゲットを決めない場合とさほど違わないことになりかねません。

「ターゲットは誰ですか?」がバカの壁にぶちあたる理由

思うに、「ターゲットは誰ですか?」という問いかけが「バカの壁」に阻まれて、上記のような「症例」を呈する理由はふたつあるのです。

1 STPのフレームワークをないがしろにしている

複数のセグメントを認識し、その中からターゲットセグメントを選ぶ、という思考経路をとらず、いきなりターゲットセグメントを決め打ちしてしまうのは問題です。想定される需要者を複数の集合として把握してみないと、属性の違いがきちんと意識されず、ぼんやりとしたターゲットセグメント把握になってしまったり、有望なセグメントを見逃したりしかねないからです。

マーケティング・ミックスには必ずその前提としてSTPによって確定されたターゲットセグメントがあるはずですから、4Pそれぞれの説明には「このターゲットセグメントだからこのプロモーション手段を選んだ。その理由は…」という説明ができなければなりません。ターゲットセグメントを変えても4Pの中身が変わらないとしたら、そのマーケティング・ミックスは選んだターゲットセグメントに即していないか、またはセグメントの切り方自体が意味をなしていないことになるでしょう。

2 問いの真意が伝わっていない

ターゲットは誰ですか?という質問は、じつはその人の標的市場に関する認識を通じて、市場動向や需要者行動をどのくらいリアルに捉えているかを訊いているわけです。たとえば、マーケティング・ミックスを説明する際には、標的顧客の属性や行動に照らし、「典型的需要者はこういう人たちだから…こういう施策が効きやすい」という説明が可能であるはずですし、異なる標的市場に狙いを定めれば、多くの場合マーケティング・ミックスはガラリと変わるはずです。

かかる質問のねらいを理解させないままに回答を迫ると、単に「回答用紙の空白を埋める」ような返事が返ってくるのはむしろ当然ではないでしょうか。「ターゲットは誰ですか?」という質問にこたえる過程で、ターゲットセグメントに対する自らの理解をあらためて吟味して欲しいのです、例えば… という問いかけをしたならば、回答のニュアンスは随分違ったものになるように思われてなりません。

下の写真は、私が実務で使っている「顧客ターゲットを明らかにする5つの質問」。いきなり「ターゲットは誰ですか?」と問いかけることをせず、4つの問いを投げかけ、そこで得られたキーワードを整理してターゲット像に迫ろうとしています。デモグラフィック(人口統計学的)属性以外の特徴をあぶりだすのに有効だと感じています。

顧客ターゲットのプロファイリング