相続した家屋の取得費がわからない…
譲渡所得税が高額になるのを防ぐには?
1.相続した家屋を売却する際の落とし穴
相続した不動産を売却する場合、譲渡所得税が発生します。譲渡所得税の計算では、不動産の売却価格から「取得費」と「譲渡費用」を差し引いた金額に対して税率がかかります。
しかし、相続した不動産の取得費が不明な場合、多くの方が「概算取得費5%」を適用することになり、大きな税負担が発生することがあります。特に土地を含む不動産の場合、取得費を適切に算定することが節税の大きなポイントになります(建物は多くの場合償却済みであるので、あまり実務では問題となりません)。では、取得費が不明な場合にどのような方法で適正な取得費を求めることができるのでしょうか?
取得費を適正に算定するためには、以下のフローに沿って検討することが重要です。
① 特例の適用有無を確認する;まず、相続した不動産が過去に「買い替え交換の特例」などの適用を受けていないか確認します。これらの特例が適用されていると、取得費の計算方法が異なるため、税理士などの専門家と相談しながら手続きを進める必要があります。
② 実額を把握できる資料を収集する;次に、被相続人が取得した際の売買契約書、領収書、固定資産税評価証明書など、取得費の実額を把握できる資料がないか探します。不動産の登記情報や、過去の確定申告書類も有力な手掛かりになります。
③ 推定取得費(購入時の時価)を検討する;取得費の実額が不明な場合、「推定取得費」を用いることが可能です。具体的には、不動産鑑定評価を利用する、過去の類似取引事例をもとに推計する、当時の地価公示価格や路線価を基に計算する、といったような方法で取得時の時価を推定し、概算取得費よりも適正な価格を算出することができます。
推定取得費を算定する方法として、簡易的な時点修正(過去の価格を現在の価格から遡って推定する方法)があります。ただし、この方法は税務署に否認されるリスクがやや高いため、慎重な対応が必要です。
この点、不動産鑑定士による「過去時点の鑑定評価」を活用すれば、当時の市場動向を反映した鑑定評価により、合理的な取得費を導き出すことが可能です。例えば本職は、高度成長期の昭和47年、バブル期の平成2年のような価格変動が激しい時期の「過去時点の鑑定評価」をも担当した経験があります。
大変ハードでしたが、大いにやりがいを感じた案件として記憶に残っています。