去る4月19日金曜日、全国競売評価ネットワーク(KBネット)の総会が熊本市のANAクラウンプラザホテル熊本ニュースカイで開催されました。
KBネットとは、競売評価の精度向上等を目指して全国の競売評価人(注)がつくる組織で、毎年持ち回りで総会が開催されています。
昨年の開催地は福島県郡山市、一昨年は島根県松江市でした。
(注)評価人とは、民事執行法に基づいて、競売物件の売却基準価額を評価する人のことです。知識・経験を有する不動産鑑定士の中から執行裁判所が試験等により選任するのが通常です。本来、評価人は、具体的事件について担当裁判官から評価命令を受けた者のことを指すので、上記の競売評価人は、正しくは「評価人候補者」と呼ぶべきものです。
競売評価人になって10年目の私は、昨年はじめて福島県郡山市で開催された総会に参加したのですが、総会参加者約265名(うち懇親会参加者約225名)という盛大さに驚きました。
そのとき、もっとも印象に残ったのは、東北各県が誇る銘酒の数々が次々に振る舞われたことでした。
そこで、今回の懇親会でも、全国からいらした方々に九州沖縄の銘酒を味わって戴こうと、各県担当者が気合を入れて準備に当たりました。
『大分県はもちろん麦焼酎だよね』『とんでもない!』
大分県の銘酒のセレクトは、私に委ねられました。これは責任重大です。
他県の出方も慎重に予測して、専門家の意見も伺いつつ、予算の範囲内でうまく銘柄選択を図る必要があると判断しました。また、来場者の好みと、これだけは試してもらいたい、という大分県民としての思いも両立しなければなりません。
鹿児島、宮崎はブランド焼酎を揃えてくるでしょう。沖縄は泡盛の古酒(クースー)、福岡は日本酒を中心に、粕取焼酎なども出してくるかもしれません。佐賀は、鍋島・東一など東日本の方々が好む端麗な銘酒を数多く擁しますから強敵です。米どころ熊本は、球磨焼酎の産地であるとともに、素晴らしい日本酒の産地でもあります。侮れないのが長崎。通はまず、長崎の日本酒に殺到する可能性もあります(じつは宴会当日、私もそのような行動に出ました)。
東日本からいらした方々は、『大分県はもちろん麦焼酎だよね』というご認識をお持ちかもしれません。とんでもない。それだけじゃない「酒どころ大分」の実力を存分に見せつけてやる!という気持ちで、何度も銘柄リストを作りなおしました。
最初は、超稀少品である「長期貯蔵粕取焼酎 武惚」(小野酒造・由布市庄内町) なども候補に入れていたのですが、少々マニアックすぎると考え直し、最終的には後掲の銘酒6本といたしました。
私たちが持ち込んだ大分県が誇る銘酒6本とは
さて、私たちが当日、宴会場に持ち込んだ大分県の美酒銘酒は、以下の6種です。カッコ内は、メーカー及びその所在地を示しています。
簡単なコメントとともにご紹介します。
1 安心院スパークリングワイン(三和酒類・宇佐市)
大分の三和酒類といえば、「下町のナポレオン」こと、むぎ焼酎『いいちこ』。
『いいちこ』は、今年で発売40周年(1979年発売)になりますが、安心院ワインは、それより古く、1974年から発売されています。
今回ご賞味いただいた『安心院スパークリングワイン』は、本場フランスのシャンパーニュ地方と同じく、瓶内二次発酵(ワインに炭酸ガスを注入するのではなく、ワインを瓶詰後、糖をアルコールと炭酸ガスに分解する酵母により、スパークリングワインを作る方法)による本格的なスパークリングワインで、シャルドネ特有のすっきりした飲み口と、瓶内二次発酵によるきめ細やかでなめらかな泡立ちが特長です。
100%地元安心院産のシャルドネ種を使い、手間のかかる本格的なスパークリングワインでありながら、税込3,437円というお手頃価格で、今や地元でもなかなか手に入らない「超レアもの」といえます。
2 鷹来家純米大吟醸(浜嶋酒造・豊後大野市緒方町)
鷹来家は、知る人ぞ知る大分の名酒。
完全手造りの蔵元ということもあって、鷹来屋の酒は地元大分でも、取扱店がごく限られます。
食中酒としてまさに理想的な、しっかりした中にも綺麗で上品な味わい。お酒好きな方々にも、自信をもっておすすめいたしました。
3 智恵美人純米吟醸(中野酒造・杵築市)
香り華やかでフルーティーな味わい。ワイン感覚でお楽しみいただけます。「智恵美人」の名は、蔵元の初代女将智恵さんにちなんで命名されました。
伝統的な味わいの漢字ブランド「智恵美人」と、よりワインのような味わいを志向したひらがなブランド「ちえびじん」とがありますが、今回は漢字ブランドのものをご賞味いただきました。
なお、ひらがなブランドの「ちえびじん純米酒」は、昨年フランスで行われた日本酒コンクールで最優秀賞の「プレジデント賞」に輝いています。
4 耶馬美人(旭酒造・中津市)
かつて国税庁鑑評会で日本一に輝いた「ライスブランデー」とも称される米焼酎。
極上の吟醸酒を思わせる芳香が印象的な、大分県を代表するブランド焼酎といえます。
生産量は非常に少なく、製法は極秘とされています。「耶馬美人」の名前は、昔から耶馬渓には美人が多いと言われていることに由来しています。
5 井田萬力(藤居醸造・豊後大野市千歳町)
ライトで軽やかな味わい。すっきりとした飲み口の良さの中にも、麦の味わいが残るバランスの良い麦焼酎です。
6 兼八(四ツ谷酒造・宇佐市)
麦を煎ったような香ばしさで、別名「銀チョコ」とも呼ばれる麦焼酎です。
ほかのプラントが真似したくともできないワンアンドオンリーの深い味わい。耶馬美人と並び大分県を代表するブランド焼酎です。
さてお客様方の反応はいかに?
さて、宴会当日。
九州沖縄各県の担当者が選りすぐりの銘酒をご用意した甲斐あって、全国からいらした200名を超える方々に大好評を得ました。
思わず飛びつきたくなるような銘酒勢ぞろいで、私自身も十分堪能させて頂きました。
ちなみに大分県の人気ナンバーワンは、希少で知られる安心院スパークリングワイン(三和酒類)。
さすがにみなさんよくご存知で、司会者が銘柄紹介したときにはもう、ほとんど残っていない状態でした。